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分離型ワラント債の活用       横尾宣政

| 未分類 | 2022年5月09日 |

分離型ワラント債の活用       横尾宣政

 日本においてワラントのイメージは悪い。無価値になって投資した資金全てをなくしてしまう商品と思われているようだ。その原因は、ワラントを勧めた営業マンと、ワラントを購入した顧客の双方が、ワラントを理解していなかったことにある。

 私自身、久し振りに支店に転勤した時にそのことを痛感した。ワラントについて後輩達に質問した私は、彼等が殆ど理解していないことを知って驚いた。慌ててワラント購入者数十人を訪問すると、全員がワラントの商品性を理解しないまま購入していたことが分かった。

 上場会社のワラント債を引き受ける立場あった事業法人部員はワラントの商品性を十分理解しており、当然、支店の営業マンも理解しているものと思い込んでいたが、支店を統括していた役員や社員には、そのような知識はなかったのだ。

 プラザ合意の後に、トリプルメリット(円高・金利安・原油安)相場と湾岸開発(東京湾)相場で株価が急騰し、ドル円スワップを利用したドル建ワラント債の発行コストがマイナスになるという異常な状況が起きた。その為、ドル建ワラント債の発行が急増し、その結果、営業マンが商品を理解する前に、新発ワラント(ワラント部分)が大量に国内支店に配られたのである。それらのワラントが短期間で大きな利益を生んだ為に、一挙にワラント・ブームが起こり市場売買が始まった。発行市場に携わっていた社員以外ワラントを理解していなかったのは、そのような理由があったのだ。当然、他の証券会社も同様だった筈だ。その為にワラントの被害者が大量に出て、大蔵省を含め、世間の風潮が「ワラント悪役説」一色になったのである。

 国内第一号のワラント債を発行する時、ワラント部分の価値をどのようにするかに困った大蔵省は、野村證券に意見を求めてきた。引受部(ファイナンスの事務作業部隊)から依頼された私は、ブラック・ショールズ・モデルの資料を作っても無駄だと思い、「連立n元m次方程式」を使った分かり易い資料を作って大蔵省に提出した。当時の大蔵省はワラントについてあまり理解していなかったようである。

 ワラントは、商品性を理解して活用すれば、株より遥かに投資効率が良く、株で投資するよりリスクを低くできる。しかし、営業マンがワラントの知識を身に付ける前に株式市場が崩壊し、ワラント価値はゼロになってしまった。

 ワラントが有効的に使えるのは「いつ暴落するか分からない」「いつ高騰するか分からない」というような曖昧な状態の時である。すなわち、今のように「ウクライナ問題で先の相場が分からない」というような時に力を発揮するのがワラントである。ところが、分離型ワラント債は殆ど発行されていない。

 2011年に「個別株オプション」が解禁されたが、2022年の段階で、殆どの銘柄において取引は成立されておらず、取り扱う証券会社も殆ど存在していない。分離型ワラント債であれば、証券会社と関係なく償還期限まで存在は保障されている(行使された分は減少するが)。

 今現在、分離型ワラント債が発効されていたら、投資リスクを限定したエクイティ投資が行えた筈であり、仮に、ウクライナ問題が1~2年続いたとしても、株式市場が回復するまでじっくり保有することができる。

 投資家だけでなく、エレクトロニクス産業などの復活にも貢献できたと思う。

 1980年代後半、ワラントバリューの高さとドル円スワップを利用してマイナスコストのワラント債を発行した多くの企業がプラザ合意の逆風を乗り切った。その時のように、日本の超低金利を利用した円建ての分離型ワラント債を発行すれば、当時に近いコストで発行できる筈である。更に、ワラントバリューは低いだろうから、購入する投資家も大きな利益を得て、発行企業と投資家に「ウイン-ウイン」の関係ができる筈である。

 「ワラント債の発行を求める」投資家の声を上げることによって、上場企業やマーケットを活性化する。すなわち、投資家発の有価証券市場を形成する時代を考えるべきではないか。

 先日、民放の番組に出演した政治家が、「為替に合わせて、伸びる産業が出てくる」という無責任な発言をしていた。従来からの民間頼みのスタンスで満足している政治家に任せていて良いのだろうか。

 円高で生産拠点を海外に移した自動車産業が、国内に生産拠点を戻すことはないだろうし、国内には、いくらでも供給してくれるかつての半導体産業は残っていない。

 為替に関係なく、かつて強かった産業を復活させることが第一であり、それを投資家の力で行っていく。今が最後のチャンスなのかもしれない。

横尾宣政