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金融知識         横尾宣政

| 未分類 | 2022年4月06日 |

金融知識

 一般的には、金利が上昇すると株価は下がると言われている。

 景気が過熱して物価が上昇してくると、それを抑制する為に金利を引き上げて金融を引き締める。当然、債券価格は下落する。既存債券の利回り(市場で売買されている利回り)を、新たに発行される債券利回りに合わせる為である。当然、金利が本格的な上昇局面を迎える時には、将来の金利上昇分も考慮に入れた値下がりを起こすこともある。また、金融引き締めによってマネーサプライ(マネーストック)が減少し、株式市場に入ってくる資金も減少する。その為に株価も下落すると言うのが一般的な考え方である。

 ところが、金利の上げ下げが大きい米国において40年の株価動向を検証してみると、金利の上昇局面で株価は大きく上がっているのである。勿論、短期的には株価の下げ局面もあり、小刻みな上げ下げを伴いながら長期的な上昇局面を作り上げている。好景気に伴う物価上昇を抑える為に金利は引き上げられるが、その影響よりも、好況の影響の方が強かったということである(オイルショックの時だけは株価が下がっている)。

 この様に、常識だと思い込んでいる内容が、検証してみると間違っていることは多くある。金融に関するものが特に多いと感じられるのは何故だろうか。それは、小学校から高校に至るまで、金融に関する教育がなされなかったからではないか。その為に金融に対する興味が湧かないのだろう。

 漸く今年から、政府が重い腰を上げて、高校の家庭科での金融教育が始まる。政府はその理由を、成人年齢が2歳早くなり、18歳からクレジット・カードを作ったり、金融に関する様々な契約が交わせるようになるからだと言っている。

 成人年齢が20歳だったら金融教育が不要なのに、何故18歳になったら必要になるのか、その理由は言っていない。20歳になったら自然に金融知識が身に着くというのか。

 現実問題として、金融知識を教育されなかった世代は、金融知識を持たないままにクレジット・カードを作り、ローンを組んだ。その結果、無数の「過払い金(利息)」の問題が起きた。この件での法律事務所のコマーシャルが多いのはその証だ。

 野村證券に入った私も、事業法人部で必要性に迫られるまで「複利」の知識もなかった。恐らく、証券会社に入らなかったら、必要性を感じなかっただろうし、興味を持つこともなかっただろう。

 しかし、多くの人は金を稼ぐ為に真剣に働き、稼いだ金を増やすことを考える。勿論、金が目的でない人や、働くうちに仕事に生きがいを持つ人もいるだろうが、金を増やすことに興味がある人は、金融知識を持つべきなのである。金融知識を身に付けなければ、現実を検証して先を正しく見定めることができない。

 例えば、最近個人投資家の間で盛んになっているFX取引(外国為替証拠金取引)も金融知識が必要である。

 元来、国家間の経済力の違いを調整するのが為替であって、国力の弱い通貨は弱くなっている。しかし、為替が弱くなることによって、弱い国の輸出競争力は強められ、調整が図られるのである。当然、通貨の弱い国の金利は高くなり、運用資金が流入する。逆に、今の米国のように、自国通貨を強くする為に金利を高め誘導するケースもある。すなわち、通貨と金利は密接に関係を持ちながら動いているのである。当然だが、各国の経済状況を把握するとともに、先行きの金利見通しを持たなければFX取引を行なうことは出来ない。

 私は、金融知識の第一歩は「利回り」の知識を身に付けることだと考えている。「利回り」というのは、金融の「物差し」だからである。預金をする時、債券を買う時、あるいはローンを組む時、ありとあらゆる金融取引において、条件を見定める為の共通した「物差し」だからである(金利、利回りは厳密には意味が異なっているが、ここでは同義語とみなす)。これがなければ条件の良し悪しは見極められない。

 利回りについて説明する為に10年のゼロクーポン債を購入すると仮定する。この時、日本の利回り表示である「日本式単利」で5%と記載されたゼロクーポン債と、欧米の利回り表示である「IRR(内部収益率)」で5%と記載されたゼロクーポン債と、どちらを購入した方が良いのだろうか。同じ5%だから同じだと考えてはならない。

 仮に、日本式単利で5%、価格100円のゼロクーポン債を購入したとすると、償還価格は150円になる。しかし、IRR5%、価格100円のゼロクーポン債を購入した場合は、償還価格が162.89円になる。同じ5%の債券であっても10年後の償還価格は大きく異なる。

 もっと極端なケースをNYダウで説明しよう。NYダウはこの40年間で1000ドルから37000ドルに上昇したが、この上昇率を日本式単利と複利(IRR)で考えてみるのである。すなわち、払込が1000ドルで償還が37000ドルのゼロクーポン債を購入した場合の利回りを、日本式単利とIRRで比べてみるのだ。

 結論を言うと、日本式単利は90%になるのに、IRRでは9.44730%になる。日本の利回りには時間の観念が入っていない為この様なことが起こる。日本では、今日の100万円も10年後の100万円も同じ価値という前提で利回りを計算しているのだ。

 日本国債は日本式単利で利回りを表すことになっており、米国国債はIRRで利回りを表すことになっている。このことを理解しておかなければ取引はできない。また、日本国債は1年を365日として経過利子を計算しているが、米国国債は360日として計算している。

 このように、債券ごと(国ごと)に約束事が決まっているから売買ができる。すなわち、「物差し」の目盛りが一定だからこそ、安心して取引ができるのだ。だから、債券売買を行う者はそれらの決まり事を知っておかなければならない。

 「利回り計算」は勿論のこと、「日数計算」「経過利息計算」なども理解しておいた方が良い。また、「複利」にも、「IRR(内部収益率)」だけでなく「実効利回り」という考え方もある。それらは、目的によって使い分けなければならない。

 ただし、IRR(内部収益率)の計算は、パソコンや関数電卓でなければできない。我々の時代は(1980年代)、シャープやカシオの関数電卓にプログラムを入れて使ったり、初めからプログラムが入っているヒューレットパッカード(HP)の電卓を使って計算していたが、今では、エクセルを使ったり、スマホにアプリを入れることで計算できるようになったので、是非活用して欲しい。

横尾宣政