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横尾宣政が初めて語る、本当のオリンパス事件【25】

| 個別企業編 | オリンパス | 2022年3月25日 |

横尾宣政が初めて語る、本当のオリンパス事件

【25】組織犯罪処罰法違反で逮捕されるまでの経緯

 ここからの2回は、裁判が始まる直前に再々逮捕された「組織犯罪処罰法違反」について述べていく。

(A)予定主張書面

13年6月11日に、私達3人は組織犯罪処罰法違反の容疑で再々逮捕された。金融商品取引法違反の容疑で逮捕された12年2月16日から、1年4ヵ月が経過していた。この間に新たな証拠が出てきた訳ではない。検察が本当に組織犯罪処罰法違反容疑で逮捕するつもりだったなら、有価証券報告書虚偽記載と同じタイミングで逮捕できた筈だ。

再々逮捕の背景には、私の弁護人が提出した2通の予定主張書面がある。予定主張書面の内容に混乱した検察が、関係者の供述調書を作成し直す為に、私達を組織犯罪処罰法違反で逮捕して時間稼ぎしたのだろう。

私が13年5月13日(月)付けの「検察官の主張に対する被告人の反論」、すなわち「予定主張書面(3)」で指摘したのは、臼井氏がLGT銀行の書面に私の署名を偽筆していた件である(【14】を参照)。検察が押収していた証拠の中から見つかったものだが、検察は偽筆に気付いておらず、私の署名として証拠に挙げていた。

13年6月7日(金)の「予定主張書面(4)」で指摘したのは、TEAOがウォルチ氏に支払った9億5000万円に関する山田氏の供述である。山田氏は検察の取り調べに対して「横尾から『臼井氏がオリンパスの件で精神的に落ち込み鬱病になっている。LGT銀行からの給料は貰えなくなりなっており、退職金も差し押さえられて困っている。サポートしてやらないと、何をやるかわからない』と脅されたので、9億5000万円を支払った」と供述し、検察はこの供述を、私がオリンパスの粉飾を知っていた証拠とした。

しかし、臼井氏に鬱病の兆候が出てきた時に臼井夫人が医者に送ったメールや、医者の診断書を確かめると、臼井氏が鬱病を発症した時期が9億5000万円の送金より半年以上後であることが分った。また、鬱病の原因が個人客とのトラブルだったことが分かり、臼井氏の給料が止められていなかったことや、LGT銀行が臼井氏をスイスの病院に移して手厚い治療を行っていたことも分かった。その事実を「予定主張書面(4)」で指摘したら、4日後の13年6月11日(火)に、私達は組織犯罪処罰法違反の容疑で再々逮捕された。

6月10日(月)に、山田氏、森氏、臼井氏の事情聴取が1年数か月振りに再開され、3人の供述調書が作り直された。山田氏と森氏は9億5000万円の支払いについて、臼井氏は偽筆について、それまでの供述内容を翻した。

13年7月17日に予定されていた初公判に向けて公判前整理手続が大詰めを迎えていたが、私達の再々逮捕で公判前整理手続は延長され、初公判は13  年12月25日に延期された。

(B)検察の主張に関する検証

この件に関する検察の主張は、以下の通りである。

NEOの成功報酬はオリンパスの粉飾に関わった犯罪収益であり、そのことにリスクを感じたGCIケイマンは、ウォルチ氏にNEOのGPを渡し、彼経由で成功報酬を受け取ることにした。

07年6月1日にNEOのGPがGCIケイマンからGurdon(ウォルチ氏の会社)に変わり、NEOの成功報酬はGurdonに入ることになった。

NEOからGurdonに支払われた12億5925万円(08年9月11日)の約9割はGCIの関係会社(E-Quality)に払い戻された。

更に、TEAOからNayland(ウォルチ氏の会社)に支払われた9億5000万円(08年12月19日)のうち9億3000万円もGCIの関係会社(Instage)に払い戻された。

これ等の資金は、シンガポールのユニットトラスト(Pan Pacific)を経由してLGT銀行の財団に送金された。この資金の流れは、明らかに犯罪収益を隠す為のマネーロンダリングである。

〇08年9月11日にGurdonに支払われた12億5925万円

ウォルチ氏は、リヒテンシュタイン公国の裁判所で「GurdonがNEOのGPに就任する際、LGT銀行CEOのマキシミリアン公子にNEOの成功報酬を貰って良いかとお伺いを立てたら、毎月の管理手数料だけにしておけと指示された」と供述している。つまり、成功報酬は取るなということである。

ウォルチ氏がマキシミリアン公子にNEOの成功報酬について助言を求めたのは、ウォルチ氏がオリンパスの粉飾を知っていたからである(ウォルチ氏が粉飾を知っていたことは、群栄化学工業との民事裁判で森氏が証言している)。

オリンパスの粉飾や3社株買取が簿外損失の解消目的だということを知っていたマキシミリアン公子は、3社株売買で発生する成功報酬を手に入れることにリスクを感じたのだろう。しかし、3社株売買での簿外損失解消がCFCに貸し付けた300億円の返済に繋がることを認識していたLGT銀行の幹部は、ウォルチ氏がNEOのGPを引き受けることの重要性を認識していた。

マキシミリアン公子の助言を受けたウォルチ氏は、小野に対して「GCIケイマンが見つけてきた案件については、成功報酬を返してあげる」と言って、08年3月の3社株売買が終わった後に、GurdonとE—Qualityの契約を作成し(08年4月)、成功報酬12億5925万円の約9割をE-Qualityに送ってきた(E-Qualityは、小野がGurdonの事務下請けを行っていた会社)。

〇08年12月19日にNaylandに支払われた9億5000万円

ウォルチ氏は、NEOの成功報酬が08年9月11日の12億5925万円で全てだと思っていたが、08年10月22日になって「追加の成功報酬9億5000万円を送金する」と森氏から電話が掛かってきた。既にGurdonで1億円以上の成功報酬を受け取っていたウォルチ氏は、マキシミリアン公子との約束を思い出し、更なる報酬を得ることにリスクを感じた。

咄嗟に「Gurdonを清算してしまったので新しい会社を用意するまで送金を待って欲しい」と言って、9億5000万円の送金を先送りにした。

しかし、LGT銀行のGurdonの口座を確認すると、08年11月24日まで稼働しており、森氏に言ったことが偽りだったことが分かる。

ウォルチ氏は新たにNaylandという会社を用意したが、オリンパスには、その様な会社に送金する理由がない。そこでTEAOとNaylandの間でコンサルティング契約を結んだ(TEAOのサインは森氏)。

更にウォルチ氏は、Naylandに入ってくる資金をどうするかを考えたが、NaylandとE-Qualityは契約を結んでいない。

そこでウォルチ氏が考えたのが、NaylandとInstage(LGT銀行の勧めで作った、顧客紹介料の節税対策会社)の間でコンサルティング契約を結び、Naylandに入ってくる9億5000万円の大半をInstageに送金するというものだった。

私達は、この様な契約が交わされ、Instageに資金が入ってくることなど聞いていない。

NaylandとInstageの契約書(08年12月1日付)が、私達に隠して作成された。Naylandの署名者はウォルチ氏で、Instageの署名者はLGT銀行シンガポールのリ・ピン・ピン氏(Lim Ping Ping)とアジフ・アーメッド氏(Asif Ahmed)になっている。

ただし、リ・ピン・ピン氏とアジフ・アーメッド氏の署名を見ると、彼等が別の会社(Triplton Group Limited)の書面にした署名を、スキャナーで写し取ったものになっている。

だから、「Authorized Signatory」の他に、元々の契約書に記載されていた「Authorized Signature(s)」が印字されていて、「INSTAGE LIMITED」に重なって「Triplton Group Limited」という社名が印字されている。捏造された契約書を証拠採用することは違法行為である。

〇Pan Pacificの目的

E-QualityとInstageの資金は、Pan Pacific(シンガポールで組成された投資信託の一種)に送金され、その後、LGT銀行が管理する私達3名の財団(ファンデーション)に送金されている。これらの送金は、全てLGT銀行の行員が行っている。

Pan Pacificというユニット・トラストの組成は、LGT銀行が考えたシンガポール税制を利用した合法的な節税対策である(ユニット・トラストを利用した節税は、LGT銀行から説明を受けている)。

シンガポールにはキャピタルゲイン課税が存在していない。その為、海外で得た資金をキャピタルゲインとしてPan Pacificに送れば税金が免れられるのである。

しかし、裁判所はPan Pacificを使ったスキームを、マネーロンダリングのスキームと認定した。

節税スキームとマネーロンダリングのスキームの違いは簡単に分かる。それを確認すれば、この様な誤認が起こることはない。すなわち、節税スキームは実名を使い、マネーロンダリングのスキームは名前を隠すということである。

Pan Pacificは、実名口座の資金を、実名の送金指示書で動かして購入している(私達は、偽名口座を作っていない)。このことは、一審判決にも「被告人横尾は、9月5日頃自己名義のLGT銀行口座から4万3581.69米ドルを、被告人羽田は、自己名義のLGT銀行口座から2万6149.02米ドルを、被告人小野は、自己名義のLGT銀行口座から1万7432.68米ドルを、Pan Pacific口座に送金した」と記載されており、裁判所も把握していた筈だ。

週刊エコノミストの副編集長からこのスキームについて聞かれた国税幹部も「一般的な節税スキームであって、マネーロンダリングではない」と断言している。

横尾宣政

横尾宣政の経歴
1954年(昭和29年)兵庫県姫路市出身。78年京都大学経済学部卒業後、野村證券に入社。金沢支店、東京第二事業法人部、野村企業情報、ワッサースタイン・ぺレラ社(米国)、浜松支店、営業業務部、高崎支店、新宿野村ビル支店に勤務。98年5月に野村證券を退社して、グローバル・カンパニーを設立。
2012年2月16日に金融商品取引法違反で逮捕、同年3月7日に詐欺罪で再逮捕、2013年6月11日に組織犯罪処罰法違反で再々逮捕。
966日間の勾留後、保釈。最高裁での2年3ヶ月の審議後、有罪が確定。2019年8月16日に収監される。2020年11月19日に仮釈放。