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横尾宣政が初めて語る、本当のオリンパス事件 【5】

| 個別企業編 | オリンパス | 2022年1月14日 |

横尾宣政が初めて語る、本当のオリンパス事件

【5】オリンパスの決算対策と朝日監査法人

ここで改めて、オリンパスが92年3月に行った決算対策について見ておくことにする。オリンパスは、山一證券が既に出してしまっている250億円の実現損を、決算対策商品から出る仮想利益で消そうと考えた。

そのことは、オリンパスの経理部が作成した92年1月20日付の「運用状況と決算数値について」という書面に詳しく記載されている。損失はこの時点で450億円(実現損250億円 評価損200億円)とされ、「考え得る政策的対策内容」という、決算対策で作る仮想利益が以下のように記載されている。

(1)投信会社設立と該当実施可能利益額  30~60億円
(2)債券期限前償還による利益出し可能利益額  30~60億円
(3)配当取り私募投資信託購入可能利益額  60~90億円
(4)スワップション売却による利益取り可能利益額 10~20億円
(5)スワップによる利益取り可能利益額  10~20億円

各項目の最大額を合計すると、実現損と同じ250億円になっている。また、92年3月に掛かってきた山田氏の電話をメモした用紙には、SBC(スイス銀行)75億円、IBZ(インターアリアンツ銀行)50億円、UBS(スイス・ユニオン銀行)30億円、ペインウェーバー50億円、と記載されており、いずれにしても、これらの金融機関を使って「考え得る政策的対策内容」の決算対策を行ったことが理解できる(ただし、銀行名で記載されているのは、それらの銀行の系列証券会社のことだと思われる)。

決算対策商品は法外な手数料が発生するが、購入する商品にはオプションや先物が付加されていた為、コストが分からないようになっていた。250億円の仕組み益(仮想利益)を捻出するために、オリンパスは100億円近いコストを支払ったのではないか。森久志氏は、86年頃に野村證券の債券研修(1カ月)に来ていたが、決算対策商品を扱っていない野村證券では、それらの知識を得ることが出来なかったのだろう。

外資系証券会社は、何故このような悪辣な商売を行っていたのか。欧米からの外圧によって、運用部門と引受部門との間のチャイニーズ・ウォール(情報隔壁)が義務付けられ、証券会社のメインエンジンとも言うべき事業法人部は形骸化したが、その強力な組織が生きていた80年代までは、例え大手の外資系証券といえども上場会社に入り込むことは容易でなかった(大半の上場会社は、四大証券と幹事関係で強く結びついていた)。

当時の外資系証券にとって唯一の稼ぎ場所と言えたのが、巨額の運用損失を抱えて立ち往生している上場会社に対する決算対策商品の販売だった。商品コストを顧客に隠して、顧客から不当に高い利益を搾り取ることを目的としていた決算対策商品は、売却時の価格も彼等に大きな利益が発生するように設定されていた。

 山田氏は「横尾に決算対策商品のアドバイスをもらった」と証言しているが、決算対策商品のアドバイスをする為には、商品に付加されたオプションを含め、完璧な商品情報が必要であるが、電話のメモには、そのような商品情報は記載されていない。この時に私は、外資系証券会社の商売のやり方を説明し、無駄な手数料を払う前に全ての損失を計上するようアドバイスしたが、そのことは山田氏も証人尋問で認めている。

いずれにしても、有価証券報告書には決算対策商品という注意書きもなく、関係者と監査法人以外は、決算対策商品が存在しているかどうかも分からなかった。仮に決算対策商品と分かったとしても、組み込まれたオプションや先物等についての商品情報が記載されていない為、それらの市場価格は分からない。だからこそ、監査法人には決算対策の詳細(決算対策商品の商品情報、決算対策の金額)を把握していた監査法人の責任は重かったのだ。当然、決算対策に対する判断は全て監査法人に委ねられていた。委ねられていた内容は以下の2点である。

①決算対策で発生する「仮想利益(見せかけの利益)」を現実の利益として認めるかどうかは監査法人の判断に委ねられており、それが認められれば法的(会計基準の観点)には何の問題もなかった。「購入代金の一部を振り込み返したものを利益(配当)と認めるのか」「購入した決算対策商品の金額に対して、どのくらいの利益(配当)を認めるか」「決算対策商品を購入してから利益(配当)を出すまで、どのくらいの時間を空ける必要があるか」等、これら全てを、監査法人のモラルに委ねていたのである。

②購入後の決算対策商品の価格を把握できるのは、会社から決算対策商品の詳細の説明を受け、決算対策商品の説明書(目論見書)を入手した監査法人だけである。すなわち、第三者で決算対策商品の価格を把握できるのは監査法人だけだったと言える。如何なるプロであろうと、決算対策商品の商品情報を把握しない限り、有価証券報告書を見るだけで実態は把握できない。つまり、簿価会計での決算対策は、監査法人が厳密に決算対策商品をチェックし、評価損の状況を把握することを前提に許された制度だったと言える。すなわち、決算対策商品が抱えた損失を常にチェックし、解消できる状況にあるのかどうかの判断も、監査法人に委ねられていたのである。

92年以前から決算対策の説明を受けて決算を承認していた朝日監査法人は、その後の決算内容も毎期確実に説明され、900億円に拡大していく状況を確実に把握していたのである。特定金外信託と決算対策商品は全てなくなり、900億円の損失の全ては簿外に移されてしまったが、有価証券報告書には、900億円の損失が突然消えてしまったことに関する朝日監査法人の記述はない。

横尾宣政

横尾宣政の経歴
1954年(昭和29年)兵庫県姫路市出身。78年京都大学経済学部卒業後、野村證券に入社。金沢支店、東京第二事業法人部、野村企業情報、ワッサースタイン・ぺレラ社(米国)、浜松支店、営業業務部、高崎支店、新宿野村ビル支店に勤務。98年5月に野村證券を退社して、グローバル・カンパニーを設立。
2012年2月16日に金融商品取引法違反で逮捕、同年3月7日に詐欺罪で再逮捕、2013年6月11日に組織犯罪処罰法違反で再々逮捕。
966日間の勾留後、保釈。最高裁での2年3ヶ月の審議後、有罪が確定。2019年8月16日に収監される。2020年11月19日に仮釈放。