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帰ってきた半沢直樹

| 中央銀行・金融情勢・提言編 | 日本 | 個別企業編 | 科学・趣味・その他編 | 2020年7月24日 |

 2013年に大ヒットしたテレビドラマの半沢直樹シリーズが、7年ぶりに帰ってきた。

 

 前シリーズ(前半)では銀行支店の融資課長だった半沢直樹が、上司である支店長が表彰店になるための無理な5億円融資を押し付けられ、当然のように焦げ付くと責任はすべて半沢となる。その責任で出向させられそうになった半沢が、仲間たちの協力も得て見事に5億円を回収するストーリーだった。

 

 そこには「部下の成果は上司のもの、上司のミスは部下の責任」「銀行は晴れた日に傘を押し付け、雨が降ると取り返す」あるいは「銀行員は人事がすべて」「出向させられると銀行人生が終わる」など、実際の銀行の内幕が描かれていた。

 

 ところが半沢はその危機を脱したうえで上司の責任まで問い詰めるという「現実では絶対にありえない展開」となり、その「ありえない勧善懲悪」が人気を呼んだはずである。

 

 この前シリーズは、自ら銀行(当時の三菱銀行)勤めの経験がある池井戸潤氏が2004~8年頃に書いたもので、時代設定がその頃だとしても「当時でもそんな反骨心のある銀行員」など見たことがない。現在はもっとコンプライアンス重視となっており、半沢のような銀行員はとっくに絶滅種になっている。

 

 舞台となった東京中央銀行も、そのモデルとなった三菱銀行が2006年にUFJ銀行(三和銀行と東海銀行が合併したもの)を金融庁主導で吸収合併した直後だったはずである。ドラマでも合併行によくある経営陣が出身銀行に分かれて対立するシーンが出てきたが、実際にそんなことはあり得ない。

 

 2003年10月に金融庁に「UFJ銀行は表に出せない融資資料を隠している」とのタレコミ電話が入り、隠している場所まで特定する。金融庁の検査官が急襲すると実際に段ボールの山が出てきた。検査忌避で2004年10月にUFJ銀行と担当役員3名が刑事告発される。

 

 金融庁は処分として要管理債権の引当率を55%まで引き上げたため(他行は30%程度)たちまちUFJ銀行は資本不足に陥るが、金融庁が検査忌避の刑事告発を「意識的に1年間遅らせたため」その間は他行のように増資による資本増強ができず、最後は三菱銀行による吸収合併に追い込まれた。当時のUFJ銀行はまだ「いけいけ」で金融庁から睨まれており、行儀よく金融庁のお気に入りだった三菱銀行が「ご褒美」をもらい、晴れて日本最大の銀行となる。

 

 従って旧UFJ銀行の経営陣は大半が放逐されていたため、ドラマに出てきた経営陣の対立など起こるはずがなかった。そんな事情を知ったうえで半沢直樹シリーズを見ると「余計にあり得ない話」なので面白かったわけである。

 

 しかしそんな前シリーズの最後で、半沢は怨念のある大和田常務の悪事を暴いたが、大和田は平取締役に降格となったものの留任し、逆に半沢は東京セントラル証券に出向となった。そこだけは「いかにも本当の銀行的な人事」なので違和感を覚えられたはずである。

 

 さてそこから今シリーズが始まる。原作が2012~14年に書かれているが、時代設定は2009年のリーマンショック直前のようである。2006年1月にライブドア事件が発覚し、このシリーズ(前半)のモチーフになるはずである(本誌は原作を読んでいない)。

 

 その前に東京中央銀行のモデルが三菱UFJ銀行だとすれば、その証券子会社の東京セントラル証券とは、三菱UFJ銀行の合併に合わせて数多くの中小証券会社の寄せ集めであり(2002年に合併した国際証券だけはそれなりの存在感があった)、そこに親会社の三菱UFJ銀行から社長など幹部がドカドカと入り込んできた「まとまりの全くない(仕事どころではない)証券会社」だったはずである。

 

 もともと日本では(本件のように子会社だからだけではなく)銀行より証券が下に見られる傾向が今もある。金融行政も「銀行には性善説、証券には性悪説」が自動的に適用され、それがより大きな経済事件を生むことになるが、山ほどある具体例はまたご紹介する。

 

 さてそんな東京セントラル証券の証券営業部長となった半沢のところに、大手IT企業の電脳雑技集団(日本企業のようである)から「何故か」検索事業で急成長しているスパイラル買収の相談が持ち込まれる。早速その話を聞きつけた親会社の東京中央銀行が巨額融資と引き換えに横取りしてしまう。東京セントラル証券に「出向から銀行に戻りたい幹部社員のご注進」があったからで、これも「よくある話」である。

 

 ここから半沢の反撃が始まるわけであるが、直感的に電脳雑技集団とは当時よくあった循環取引を繰り返して見せかけの高成長・高株価企業となるが資金ショートが近く、東京中央銀行から融資を引き出すために子会社の東京セントラル証券に接近したはずである。情報が親会社に漏れることが見透かされていたことになる。本誌は原作を読んでいないが、そんな流れであろう。

 

 前シリーズに比べて半沢の立場も難しいものになるが、そこは純粋に楽しめると期待する。

 

2020年7月24日

 

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